佐村河内守 交響曲第一番「HIROSHIMA」 三

2013年7月2日 Posted by seki

佐村河内守のこの交響曲第一番「HOIROSHIMA」は、まず、静かにティンパニのロールとともに始まります。これは何かの不吉な予兆にも思われ、存在が生まれてしまう「運命」を抱きしめるように主題が奏でられます。

そして、トランペットが、高らかに鳴り響いたかと思うと、陰鬱なヴァイオリンの調べが流れます。

そして、鐘の音がなり、新たな存在の誕生を告げます。ここでは、オーケストラ全体で重低音を鳴り響かせ、陰鬱な主題を奏で続けます。

と、突然、晴れやかに主題が弦楽器で奏でられ、この存在した者の行くに対する不安が綴られてゆくようです。この辺りは、伝統的な交響曲に則った構成となっていて、聴く者を何とも意味深長な思索へと駆り立てます。

そして、消えては現われ、また、消えては現われる主題は、生まれし者の哀しい性のようなものをこの主題で描き出そうとしているかのようです。

「運命」は既に動き出してしまいました。もう、何者に求められないのです。主題は、変調を繰り返しながら、転がるようにもんどりうって奏でられてゆきます。

しかし、第一楽章始まりは、ある覚悟が感じられます。それは、陰鬱なものなのですが、しかし、誕生してしまった以上、生きねばならぬという覚悟が主題を奏でるそれぞれの楽器から放たれます。

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