佐村河内守 交響曲第一番「HIROSHIMA」 四

2013年7月5日 Posted by seki

果たして、誕生せし者は呪われているのか。そんなことを想像させる余りに悲しい主題の陰鬱で美しい旋律に聴く者の魂は共振を起こし、心内に隠れていた感情をこの第一楽章は呼び起こしてくれます。

マーラー、ベートーヴェン、チャイコフスキー、武満徹、ショスタコーヴィチなど、音楽史に燦然と輝く先達の旋律すらをも仄かに彷彿とさせながらも、佐村河内守独自の主題は、もんどりうつように重い足取りで尚も前進してゆきます。

弦楽器と管楽器とのコラボレーションで不協和音を奏でながら、その生まれし者の「運命」が一筋縄ではゆかない、苦悩を予兆させながら、第二楽章へと進んでゆきます。

第二楽章は、「絶望」が奏でられているということです。出だしの静寂が包み、遠くから管楽器の音が聴こえてくるその響きは、これから訪れるであろう、煩悶を予兆させます。ここでは、武満徹張りの音響表現があり、魂の振幅の振れ幅がだんだんと大きくなってゆくさまが、不吉です。

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