佐村河内守 交響曲第一番「HIROSHIMA」 五

2013年7月9日 Posted by seki

第二楽章冒頭にもホルンが鳴り響きます。これが、呪われた存在を何となく呼び起こすのです。そして、楽曲は重々しく進行してゆき、その足取りは重たいのです。リズムは、次第に細分化してゆきます。これが、なんとも悩ましげで、気怠いのです。第二楽章でも何度となく主題が変奏されてゆきますが、これは、「死」を何となく呼び起こすようなロンドなのです。

第二楽章では、第一楽章で出現した「運命」の主題が、何度となく呼び出されることでそれが「絶望」の慟哭のように感じられるのです。それを慰めるように管楽器が優しく語り掛けるのですが、それすらをも「絶望」は拒絶するように感じられます。

次第に「絶望」の深淵の中へともんどりうって雪崩れ込むように主題は、陰鬱なまま、奏でられます。

この第二章では、しかし、「絶望」の中に幽かながらも一条の閃光が煌めく如くに、激しい旋律がほとばしります。この第二楽章は、シュニトケを思わせるものがあります。管楽器の響きや幻月期の奏で方などにシュニトケを思わせる何かがあります。

それは、闇の中に置かれたもののみが知る「絶望」なのです。第二楽章は、不安な響きで突き進みます。

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