佐村河内守 交響曲第一番「HIROSHIMA」 六

2013年7月12日 Posted by seki

「希望」とされる第三楽章は、冒頭、第二楽章の「絶望」を無理油矢理にでも振り切るかの如く力強く進行してゆきます。弦楽器で輪郭のくっきりと第一楽章に現われた主題が奏でられます。意を決して立ち上がった存在が、勇猛果敢な足取りでどしんどしんと歩く様にも似ていますが、まだ、「絶望」を振り切れずにいます。

そして、第二楽章で現われた動機も何やら逃走するかの如くに奏でられます。この第三楽章は、ホルストの「惑星」を思わせるような響きがあります。

第一楽章の第二主題、そして第一種ダイスもこの第三楽章に再び出現しますが、それは、弦楽器の最高音と最低音との分裂しながら、しじまの中に沈んでゆきます。そして、さまざまな動機が断片的に表れては消えるのを繰り返しながら、「絶望」以前の世界に再び立ち戻って「運命」を受け容れながら、そこに「希望」を見出すかのように心静かな音楽世界が展開してゆきます。この第三楽章では、これまでになかった静謐な音楽世界が奏でられます。つまり、心が浄化されるかのようにです。(続く)

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