4.「もうがまんできない」
軽快なレゲエのリズムで晴れやかなホーン響きも印象的なこのナンバーは、しかし、その歌詞の内容は、とても重いものです。
「ちよっとのひずみなら
何とかやれる
ちよっとのひずみなら
がまん次第で何とかやれる
日々の暮らしには辛抱が
大切だから
心のもちようさ」
当時の江戸アケミの心情を直接的に吐露したと思われるこの「もうがまんできない」は、しかし、軽快なレゲエのリズムとは裏腹に、
どうしても時流に乗り切れない、江戸アケミの存在の危うさを表現しています。
「ちょっとの裏切りなら
水に流せる
ちょっとの裏切りならば
水に流してしまおう
人の愛には打算が
いつもついてまわるるものさ
心のもちようさ
ちょっとの甘い罠には
はめられもする
ちょっとの甘い罠には
軽くはまってみせる
弱いアンタのおつむにゃ
せこさがげんがちょうどさ
心のもちようさ
ちょっとの搾取なら
がまん出きる
ちょっとの搾取ならば
誰だってそりゃあがまん出来るさ
それがちょっとの搾取ならば
心のもちようさ 心のもちようさ
心のもちようさ 心のもちようさ
心のもちようさ 心のもちようさ
心のもちようさ 心のもちようさ」
この心の叫びにも似た最早逃げ場のない追い詰められた江戸アケミの心情が素直に表現されています。
これは、自問自答している歌です。「心のもちようさ」というリフレインに当時の江戸アケミが抱えていた途轍もない苦悶が読み取れます。
それをレゲエのリズムに乗せて、歌わざるを得なかったこの屈折した感情は、たぶん、どうしようもなくやり切れなかったものに違いありません。
晴れやかに聞こえる筈のホーンが、なんとも悲しいメロディを奏でます。