Category: ‘レゲエ’

JAGATARA 「裸の大様」 二

2013年9月13日 Posted by seki

2.「岬でまつわ」

ジャカジャカジャーンと、ギターのリフで始まり、スカッと抜けるようなホーン・セクションでこのナンバーの開始を高らかに告げるこの「岬でまつわ」は、「こきげんにハイハイハイハイウェイ」と女声のコーラスで幕を開けます。

そして、アフリカンな味わいがあるラテン・ビートが心地良く、江戸アケミの憂いをおびたヴォーカルが「ハイウェイ風切り 心象ジグザグ/ブット飛ばしながら フッと考えた/ロンドン帰りの冷たい素振り/おまえにゃ似合わない/このままじゃ/どこまで行っても同じことさ」と、ビートに乗って歌われるのです。

しかし、何処かぎこちなくビートに乗る江戸アケミは、どこか無理しているようなこのナンバーで空元気をして見せているようにも感じられます。

そして、「岬でまつわ」をリフレインする女性コーラスの後に、

「ブッ飛ばせ あの時の臭いポーズのその裏側/ブッ飛ばせ しぶきをあげて地平線の遥か彼方へ/ブッ飛ばせ モヤモヤはもうイヤ ここでひと休み」と前のめりに驀進する江戸アケミ。

そして、間奏があり、ギターとパーカッションの絡みがアフロ・ビートとラテン・ビーの絶妙な混じり合いがJAGATARAならではの味わいを醸し出しながら、「岬はでまつわ」は疾走してゆきます。

後はパーカッション、ギター、そしてホーン・セクションとで、アフロな味わいをさらに強めて、JAGATARA独特の音楽世界が作り上げられてゆきます。

「スピードさらにスピードもっとゆっくり急げ」

淘汰は終わりますが、終曲へ向かって演奏はしばらく続きます。これが、当時ではね日本のバンドでは珍しい、アフロ・ビートが 全開の演奏が何とも味わい深いです。

何といってもホーンの音色が印象的なナンバーです。

JAGATARA 「裸の大様」 一

2013年9月12日 Posted by seki

1.「裸の大様」

江戸アケミが病を経て退院後の第一作です。オリジナル・リリースは、1+987年です。

この「裸の王様」は、ファンク・ナンバーというよりも、アフリカンな趣があるノリの良い楽曲に仕上がっています。

何と言ってもホーン・セクションが前面に出で、JAGATARAとトレードマークになる音作りがこの「裸の大様」で完成への道筋を見つけたように思います。

緊張感があるドラムと、うねりまくるベースのリズム体をバックに16ビートを刻むギターがまくし立てる軽快なナンバーは黄、しかし、その歌われている詞の内容は物悲しいものです。

「裸の大様のお通りだ/心はいつも寒々 衣はハデに/今宵も酒をくみかわし心のままに」

何とも寂しい詞を江戸アケミが何とか乗り遅れないように追っかけている様が何とも味わい深い一曲です。

表面的にはファンキーなでアフリカンなご機嫌な一曲になるところ、JAGATARAでしか醸し出せない、哀愁のある詞が心に響く作品となっています。

それにしても江戸アケミのヴォーカルのもの悲しさと言ったら言葉を失います。

じゃがたら 二

2013年9月10日 Posted by seki

2.「ウォークマンのテーマ」

「HEY Mr. ウォークマン、そんなに急いで/どこ行くの/いかした顔を見せてよ/HEY Mr. ウォークマン、あんたが好きさ/何するの」と始まる、この「ウォークマンのテーマ」は、じゃがたらにしてならば、まともなロックナンバーになっています。何処となく哀しさが響くコード進行の16ビートを刻むギターリフに物憂げにに謳われる江戸アケミの歌声は、当時、新しい音楽を視聴するディバイスとして発売され、大人気となった「ウォークマン」と「歩く男」をかけていると思われる「Mr. ウォークマン」という掛詞に妙味が宿っていています。

このあたりは、江戸アケミの詩的センスが優れている事を表わしています。

途中、パンク帳に偏重しては、びしっと曲を引き締めた後に再び、「HEY Mr. ウォークマン」と歌い、そして、終わりに向かって突き進みます。

このナンバーは、終わりに行くに従ってカオス的な音づくりとなって、江戸アケミの耳に残るヴォーカルともシャウトともつかない、心に沁み通る哀しいくもハイテンションな歌声が、終曲へ向かって驀進します。

そして、ぶつっと曲は途切れ、また、ほんのちょっと曲が流れ、まだ、ぶつっと曲は終わります。

このあら衣手洗い手触り感はじゃがたらならではの味わいです。

じゃがたら 一

2013年9月6日 Posted by seki

1.元祖家族百景

この曲は、現在、「暗黒大陸じゃがたら 『南蛮渡来』のボーナストラックとして収録されていますが、この曲のオリジナルは、1983年にリリースされたシングル曲です。そのシングル曲は、家族百景としてリリースされていますので、興味のある方は、そちらも聞くことをおススメします。

この曲は、「ぽっぽっぽっ」と鳩ポッポのおちゃらけた感じで始まる曲です。いろいろな所で言われているようにフランク・ザッパ風な曲作りですが、おちゃらけの中にとても社会風刺が効いたナンバーです。

諧謔的でもあり、猥雑でもあり、「ちゃんとした奴」を徹底的に笑いのめしているようでいて、「野球がやりたいんだよ」という江戸アケミの叫びは、銀行強盗をやらかした「俺」の心の叫びであり、ものすごく哀感があふれるフレーズとなって、胸に響きます。

この曲は、じゃがたらの数あるナンバーの中でも、異色の光を放っていて、時に生真面目すぎる程に、或いはストイックなまでに自身を追い詰めている江戸アケミの楽曲としては、遊び心に溢れたナンバーで、この楽曲を聞くと、何故か、ほっとします。

暗黒大陸じゃがたら 九

2013年9月5日 Posted by seki

「南蛮渡来」 八

8.「クニナマシェ」

女性コーラスが「人類ミナ兄弟」とずっと繰り返す中、パンクにしては気怠さがあるリフのギターに乗せて、江戸アケミのヴォーカルが遠いところから沸き起こるようにして「AH AH AH」と叫び、始まります。

そして、「ヤラセロセロ(セロ)」と番棱のメンバーが全員で歌いながら、江戸アケミが加わります。

そして、静かに唱えるように「また来る者たちのお祭りだ/また来る者たちのお祭りだ/死に行く者は海になだれ込む/また来る者たちのお祭りだ」と江戸アケミが抑えて歌ったかと思いきや、「ヤラセロセロ ヤラセロ」と罵倒するかのように叫び出します。

そして、女性コーラスが「ぼくたちは光の中でチャチャチャ」とリフレインするのですが、これはどこか呪詛的な感じがする、または、宗教的な恍惚感が漂う不思議な音楽世界が突然開けます。

そして、江戸アケミが「雨よ降れ、地よ踊れ/死に行く者の革命だ/風よ吹け、足を鳴らせ/ゴキブリ共のお通りだ」と煽情的に歌い上げます。

そして、渾沌とした雰囲気に音に変化を与えて、最後まで突き進んでゆきます。

「よく見ろ、あいつの目を/あいつの手を[……]」

「火をつけろ/あいつの家に」

この「クニナマシェ」は、JAGATRAの後期の楽曲に通じる作品に位置付けられと思います。恍惚感の中に祈りを見るような例えば、バリ島の伝統音楽「ケチャ」に通じるものがあります。

とにかく大作です。

暗黒大陸じゃがたら 八

2013年9月3日 Posted by seki

「南蛮渡来」 七

7.「FADE OUT」

喘いだ呻き声で始まる、このレゲエ・ナンバーは、ちょうど7分のナンバーとなっています。

「息苦しくてかなわない/あいつに貰ったこの道具が
/俺の皮膚の隙間をしめつける/臭いその足」

「女は神経症の豚の下で/クソまみれて快楽に泣く/とめどもなく後ろから流れ出るのは/倒錯につかれた裸のサル」

何と現代詩的な言葉をつぶやくように投げかけながら、江戸アケミは、次第に聴く者を挑発してゆきます。そして、ギター演奏も、時折、閃光が光るかのような旋律を引きながら、江戸アケミを鼓舞しているかのように奏でられてゆきます。

そして、「FADE OUT」という言葉がリフレインされてゆくのですが、これが一筋縄では行きません。江戸アケミならではの煽情的なヴォーカルで聴く者に戦いを挑んでいるかのように歌われるのです。

そして、ホーン・セクションの登場でさらに、この曲は、渾沌とした雰囲気を醸し出しながら、終曲へと突き進みます。それにしても「倒錯につかれた裸のサル」とはなんと見事な表現か。

暗黒大陸じゃがたら 七

2013年8月30日 Posted by seki

「南蛮渡来」 六

6.「ヴァギナ・FUCK」

この曲の構造はとても単純です。ファンク・ビートに載せて、江戸アケミがこの卑猥な言葉「ウァギナ・FUCK」とただ、繰り返し叫んでいるだけなのです。性的なものは、青春につきもので、「ヴァギナ・FUCK」と叫ぶ江戸アケミは、たぶん、その虚しさつも知っていると思われます。

ただ、「ヴァギナ・FUCK」と叫ぶだけにもかかわらず、さまざまに感情が胸奥に去来します。この曲は、聴く者を江戸アケミ流のやり方で、煽情していますが、この2分足らずの曲で、性的なこと全てを語り尽くしたかのような感じさえ受け、この曲の最後に「アンタ微笑を読んだのかい それならもっと上手にやりな/彼氏をアクメに誘い込む/とっておきのフェラチオを」と投げやりに、そして罵るかのように喚く、江戸アケミは、この性に対しても禁忌などなく、全てもさらけ出す覚悟が、この曲には感じられます。

ただ、「ヴァギナ・FUCK」と叫ぶだけの曲でしかないにもかかわらず、この曲は、饒舌に物事を語り掛けます。

ぶっ飛んだパンクなナンバーです。

暗黒大陸じゃがたら 六

2013年8月29日 Posted by seki

「南蛮渡来」 五

5.「アジテーション」

街の喧騒のような効果音からファンキーなギターフレーズに「CHU、CHU、……」とファルセットボイスでリズムに乗る中、江戸アケミが物憂く「忘れられたアジテーション」と聴く者を煽りながら、ファン・ナンバーを歌い出します。

「俺の身体を通り過ぎる/行き場の無い恨みを/人ごみの中、今日もはらす/もうこれ以上お前に/話す事はは何ひとつ無い/アジテーション」と、現代詩と言っても過言ではない歌詞を何かに八つ当たりするのをじっと堪えたかのように江戸アケミが吐き出すように歌います。

そして、ギターの挑発的なフレーズの後に「ふりかかる灰をかきわけ/投身自殺だ」と衝撃的な歌詞を歌います。

これはねもう、現代詩です。この詩は江戸アケミの文学的な才能の片鱗が見事に消化した強烈なナンバーです。

そして、この「アジテーション」は「忘れじのアジテーション」というリフレインで終わりを迎えます。

「アジテーション」と曲名がついているだけあって、この曲は、直接的に聴く者を「煽る」ことはなく、間接的に聴く者を「煽る」どこか、暗鬱な曲となっています。ここにも江戸アケミのやり場のない鬱屈した思いが凝縮されていて、このナンバーにも江戸アケミの《存在》論的な大問題を抱えてしまった人間というものの哀しき生きものの思いが控えめながらも強烈に放たれています。

暗黒大陸じゃがたら 五

2013年8月27日 Posted by seki

「南蛮渡来」 四

4.「タンゴ」

「ワン、ツー、スリー、フォー」と江戸アケミの掛け声で始まるこの「タンゴ」はJAGATRAを代表する一曲で、名曲との呼び声が高いナンバーなのです。

レゲエのリズムに哀しく乗るように江戸アケミのヴォーカルが哀しく響くナンバーで、「ひとつ、ふたつ、/みつつ数える前に あんたは/ひとつ、ふたつ、/みっつ数える前に 天国へ」という何とも意味深長な歌詞が何とも物悲しい雰囲気を醸し出します。

それがレゲエのリズムな事が更にこの曲を悲哀に満ちたナンバーに仕立て上げます。前曲の「BABY」のパンキッシュで煽情的なナンバーとの対比はバッグで、この「タンゴ」がこのアルバム「南蛮渡来」に収録されたことは奇跡のようです。全く以ってこの「タンゴ」はこの「南蛮渡来」、いや、JAHGATRAの数あるナンバーの中でも白眉な一曲です。
余り物事を語らずに、これだけ《存在》の悲哀が出せる江戸アケミの素質は抜群と言えます。

JAGATRAでは、パンクのように激しい曲があると思えば、なんだか哲学的な詞の内容を持ったナンバーが混然一体となって聴く者の魂に直接訴えかけます。

暗黒大陸じゃがたら 四

2013年8月23日 Posted by seki

「南蛮渡来」 三

3.「BABY」

「OH~、HEY/BABY、BABY、/BABY/BABY、それだけのことさ」とファンク・ビートを刻むギターのリフに乗って放たれる江戸アケミのヴォーカルに若者ならば誰でも抱くであろう、何者に対してでもない憤りのようなものを感じます。

JAGATRAの音楽には欠かせないホーンセクションの心に残る響きなど、怒りに満ちた祝祭のような味わいすら醸し出している一曲です。

何度も繰り返される「BABY」という言葉とは裏腹に、暴力的なフレーズが吐き出されるこの曲は、ファンキーなJAGATYRAの持ち味が存分に打ち出されているものとなっています。

「BABY」という言葉は、何度も聞いている内に心にこびりつき、まんまと江戸アケミの煽情に載せられてしまうのです。そして、知らぬうちに、自身の内部で「BABY」と叫んでいる己を見出しては、「やられた」と思わずにはいられない、アジテートする曲です。

この狂乱じみたJAGATRAが醸し出す祝祭に自然に参加させられてしまうのです。そして、いつまでも江戸アケミのヴォーカルによる「BABY」という言葉がエンドレスに繰り返されることになります。